分析装置で解明できる?クロムハーツの偽物をジャッジする2つの鑑定法とは
先日お届けしたメルマガでは
少し珍しいクロムハーツのコピー品について
あれこれと書かせていただきました。
異素材で作られた偽物のクロムハーツ。
まったく、厄介な代物です。
「これは、本物ちゃうな」
ということは、職人としての
長年の経験と勘で、おおよそ分かります。
しかし、その素材が何であるかまでは
100%断言できませんでした。
私石津の眼力だけでは
「おそらく○○だろう」
という推測しか、お伝えできないのです。
そこで、今回は、もう一段つっこんで
次の様なテーマでお届けします。
“クロムハーツの偽物を分析装置で測定したら100%解明できるか?”
コピー品の話題が続きますが、
これもまたジュエリー業界の豆知識として
気軽にお読みいただければと思います。
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◇◆シロクロはっきりつけたい◆◇
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専門の装置でクロムハーツを分析…
したことありますか?皆様。
「いつも直営店で買い物するから、
そんなもん必要ない」
大半の方は、このようにお答えになることでしょう。
しかし…
「オクで落札してみたアレ、実際どうよ?」
「知人から貰った品があるんだけど…」
等々、なんとなく気になるものがある場合。
それを、物理的に分析する方法があるんです。
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◇◆どっちを選ぶ?◆◇
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その選択肢は次の2つ。
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(1)蛍光X線分析
(2)ICP発光分析
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「X線?ICP?何それ?」
ってな感じだと思いますが…
実は私も、ざっくりとした知識しかなかったため
このたび、改めて勉強し直しました。
業界トップクラスの地金屋であるKさんに
分析の最新事情を教えていただいたんです。
地金屋さんというのは、
自分達のような職人とは、切っても切れない関係。
カスタムに使うシルバーのインゴット(塊)を用意してもらったり、
加工の際に出た金属粉を精錬してもらったり。
いつもお世話になっているのです。
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◇◆(1)蛍光X線分析◆◇
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前置きが長くなりましたが、
まずは、お手軽な蛍光X線分析です。
これは、対象物にX線を照射するだけで
その元素の含有量を解析できるというもの。
貴金属の分析や純度などの測定に、広く使用されています。
分析装置は電子レンジ位の大きさなので
買取店(質屋)や精錬所などに、よく置いてあります。
※クロムカスタム工房には、ありません;
この分析法の最大のメリットは
“非破壊検査”ということ。
つまり、アクセサリーに手を加えずに検査できるんです。
数分で結果が得られますし、
検査料もリーズナブルです。
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◇◆良いとこばかりじゃない?◆◇
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しかし、基本的に、これは表面の分析です。
検出できる元素は、
表面から数ミクロンまでに含まれる重金属のみ。
(※1ミクロン=1ミリの1000分の1)
そのため、メッキ製品の場合は
表層のメッキ成分が検出されます。
つまり、前回ご紹介した
3層のメッキをした鉛製ブレスの場合、
下層の成分までは分析できません。
もちろん、地金が鉛であることも見抜けないんです。
「意味ねぇぇぇぇ!」
という、皆様の心の声が聞こえてきそうですが;
残念ながら、文明の利器にも限界あり、ということです。
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◇◆淡い期待◆◇
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「最近の装置は、なんやかや進化して
多層メッキも分析できるようになってんのんちゃう?」
などと、私も勝手に想像していたのですが
どうやら、そこは以前とあまり変わらないようです。
逆に考えると、部分的にメッキを剥がせば
蛍光X線でも地金は特定できます。
アクセサリーをヤスリで削ってまで
そんな検査したいと思う方は
あまりおられないでしょうけど。
とにかく、この鑑定法で証明できるのは
“表面に銀メッキをしてある”
ということ位なのです。
↓鉛と思しき金属に銀メッキをした偽物です。
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【フローラルクロス ハートブレス偽物】
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◇◆(2)ICP発光分析◆◇
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では、蛍光X線がダメなら
2つめのICP発光分析はどうか?
ICPはInductively Coupled Plasmaの略で
日本語では“高周波誘導結合プラズマ”といいます。
この分析方法の原理の説明は
めっちゃ難解&長くなりますので
石津流の超・要約をしますと…
“各元素が発する光のエネルギーを測定することで
どんな元素が含まれているかを特定する”
というものなんです。
その光を発生させるために
“誘導結合プラズマ”という現象を利用するので
こんな名前がついているんです。
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◇◆条件◆◇
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で、この分析をするには
調べたいアクセサリーを溶解することになります。
つまり、偽物と疑われるブツを
わざわざ部分的に溶かさねばならないんです。
蛍光X線分析とは反対の“破壊検査”。
はっきり申し上げて
ちょっとハードルが高いです。
分析装置も少し大がかりなものになりますので
鑑定は専門のラボに依頼することになります。
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◇◆返らぬパーツ◆◇
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実際、ブレスレットなら
1コマ抜いて提出すれば、測定は可能です。
もちろん、その1コマは
元の姿では戻ってきません。
そして数日後に、アクセサリーの成分とその割合が判明します。
先の蛍光X線分析に比べると
コストも時間も手間もかかります。
精度は高いですが
「そこまでして分析するのも、なんだかな~」
と思ってしまう方が多いのではないでしょうか。
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◇◆作ったヤツ、呼んで来い(?)◆◇
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ちなみに、ICP発光分析でも
メッキの1層目は○○、2層目は○○、
というところまでは、分かりません。
溶かしたブツの何%は銅、何%は銀、みたいな感じで
ただ何がどれだけ含まれていたかが判明するだけです。
「なんや、X線だのICPだの言うても
デメリットも多いのぉ」
と思われた方が多いかもしれません。
まぁ、そう言われればその通りで、結局
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“作った人間にしか分からない”
By 地金屋Kさん
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ということなんです。
貴金属の分析で判明する部分もあるけれど
このように制約&限界が付きものなのだと、ご理解ください。
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◇◆“パチもん”は要らない◆◇
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計3回にわたってお届けした
クロムハーツのコピー品に関する裏話
いかがでしたでしょうか?
クロムハーツ・ファンの皆様にとっては
イミテーションなど、本当にどうでもいい存在でしょう。
“末永く大事にしたい”
と思えるものだけを身に付け、味わう。
シンプルですが、そういう想いが大事だと私も思います。
これからも、クロムカスタム工房は
クロムハーツが好きでたまらない方のために
本物のカスタムとメンテに尽力します。
なにかご要望があれば、いつでも石津までご連絡ください。
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※加工内容により料金が異なります。
まずは画像をお送りください。
無料でお見積り致します。
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クロムカスタム工房は
加工件数【4,108件】業界No.1、クオリティーもNo.1です。
◆一級貴金属装身具製作技能士
◆GIA GG(米国宝石学会宝石鑑定士)
両方をあわせ持つ店長の石津が、ご要望にお応えします。
どんなことでも、お気軽にご相談ください。
お問い合わせをお待ちしております。
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2. ホームページ更新情報
クロムハーツ スクロールバンドリング モチーフ修復
クロムハーツ メガネ NENERS 修理
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■編集後記
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからも「クロムハーツの修理&カスタム情報」では、
皆さんに役立つ情報を提供できればと思っています。
ご感想・ご意見など、お気軽にご連絡ください。
では、また次回お会いしましょう!!(石津 雅之)
クロムカスタム工房株式会社
代表取締役 石津雅之 (info@kuromu.com)
◆一級貴金属装身具製作技能士◆
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