はぐれクロスボール&クリップの危うい関係とは?名品パーツの裏事情解説
メルマガバックナンバー第204号
クロムハーツならではの重厚なチェーンに
必要不可欠なパーツ“クリップ”。
ファンシーチェーンやクラシックチェーンを
キリッと引き締める重要な存在です。
ワイルドなフォルムの美しさと
ワンクリップで着脱できる手軽さ。
“どちらも兼ね備えた無敵のクリップ”
というイメージをお持ちの方も多いでしょう。
しかし、実はそのクリップが
クロムハーツのウィークポイントでもあります。
これまでにも度々お伝えしてきましたが
実際、その修理のご相談は跡を絶ちません。
1番多いのはバネ交換ですが
それだけではないんです。
今回ご紹介したいのは
クリップのモチーフ部分の問題です。
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◇◆とれた!?◆◇
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クリップのボディに付いているモチーフといえば
おなじみのクロスボール。
CHプラスが施された、丸い飾りボタンのような形状です。
それが、ふとした拍子に
ポロッと外れてしまうケースが結構あるんです。
なにげにショックだと思います。
「なんで、もっと強固に接合されていないのか!?」
とお怒りの方もおられるかもしれません。
↓まずは実際の画像をご覧ください。
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http://www.kuromu.info/archives/4781
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◇◆石津の謎解き◆◇
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私は貴金属加工のプロなので解るのですが
外れるには、外れるなりの理由があります。
原因は“ロウ”です。
シルバー加工に欠かせない技術
“ロウ付け(ろうづけ)”。
ロウ付けは、アクセサリー本体よりも
融点の低い合金(ロウ)を溶かし、
接着剤として用いる溶着方法です。
つまり、クロムハーツ自体は溶かさずに
パーツを付けたり、なんやかや加工できるということ。
ロウ付けするときは、
母材のアクセサリーをバーナーでよく熱し、
ロウを流します。
そして、ロウには種類があります。
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◇◆銀ロウ・バリエーション◆◇
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シルバーアクセサリーの加工に使うのは
もちろん銀の合金である“銀ロウ”です。
銀ロウの主成分は“銀、銅、亜鉛”。
いつも「ロウが~」とか言っているのは
この銀ロウのことです。
で、銀ロウの種類というのは
“溶ける温度の違い”によるものです。
実際によく使うロウを例にすると…
融点の高い順から
~~~~~~~~~~~~
◇3分ロウ(さんぶろう)
◇5分ロウ(ごぶろう)
◇7分ロウ(ななぶろう)
◇早ロウ(はやろう)
~~~~~~~~~~~~
といった具合です。
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◇◆メリット&デメリット◆◇
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話を戻しますと、例のクロスボールには
おそらく、早ロウが使われています。
1番、融点の低いロウです。
はやく溶けて何が悪いんでしょうか?
…はい。早ロウは強度が弱いんです。
先程の“融点の高い順”というのは
言いかえると“銀の含有量が多い順”。
3分ロウは銀の含有量77%くらいですが
早ロウは銀の含有量、約50%程度。
銀が少ない分、溶けやすい&弱いんです。
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◇◆中の問題◆◇
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「ほな、なんで、そんなん使うんでっか?」
という質問の答えは
「それ以外、使えないから」
です。
…謎は解けましたか?
ロウ付けする対象物は“クリップ”です。
クリップといえば、バネが仕込まれています。
ロウを溶かして、接合面に流し込むには
クリップ自体に火を当てて熱さないといけません。
「あんまり温度を上げすぎると、中のバネが死んでまう~」
というワケだったんです。
クロスボールが無事付いたとしても、
肝心のバネが効かなくなっては元も子もありません;
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◇◆そのときどきの最善策で◆◇
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少し、ややこしかったでしょうか?
「バネが効く状態を維持したい」
↓
「低温で溶ける早ロウを使えばOK」
↓
「ロウ付けできたけど、強度が弱い」
ということです。
クロムハーツで新品を製作している職人の方も
やむなく、そうしているのでしょう。
ですから、クロスボールを再度付け直す際も
早ロウを使用します。
クロムカスタム工房では、下地処理を徹底し
できる限り強度が出るように心がけています。
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◇◆ロウ付けメソッド◆◇
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ちなみに、私石津は普段
どんな使い分けをしているかといいますと、
~~~~~~~~~~~~~~~~~
・リングのサイズ直しは3分ロウ
・丸カンの接合などは5分ロウ
~~~~~~~~~~~~~~~~~
といった感じです。
3分ロウを使う場合、かなり高温になるので
リング自体が溶けないよう注意が必要です。
しかし、それくらい銀の含有量が多い方が
ロウ目(継ぎ目)を目立たないようにできます。
そして、丸カンみたいな華奢なパーツは
程々の作業温度と強度のバランスがとれた5分ロウをチョイス。
丸カンは熱しすぎると、すぐ溶けますから。
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◇◆クリップ再考◆◇
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まとめとして一言フォローさせていただくと
クロムハーツのクリップは、割と個体差があります。
バネ修理の際に分解してみると
中の構造が微妙に異なるものも時折見かけます。
おそらくは、製作された年代等によって
仕様が違う時期がある(or あった)のだろうと思います。
ですので、クロスボールに関しても
なんらかの方法で強度を増したものが存在する可能性はあります。
(※クロムカスタム工房には、
外れたものばかりが送られてくるので
これは推測と願望の域を出ません)
耐久性は、普段の扱い方にも左右されますが
長持ちしている方は引き続きそのままご愛用ください。
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◇◆相変わらず、サビます◆◇
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最後に、冒頭でも少し触れた
毎度おなじみの“バネ問題”を。
何度もお伝えしていますが、
クロムハーツ正規品のバネは“鉄製”なので、
いずれサビます。
クロムカスタム工房では、
独自に開発したサビにくいバネに交換させていただきます。
↓バネ交換の実際の画像をご覧ください。
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【クリップブレス バネ修理例】
http://www.kuromu.info/archives/4757
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『バネのサビ』と『モチーフ外れ』
これらは、すぐに石津までご連絡ください。
どちらも、長年のノウハウを活かした
ハイクオリティーな修理で新品同様に致します。
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【クリップ修理料金】
≪バネ交換≫
…20,000円(税抜)~
≪モチーフ修理≫
…15,000円(税抜)~
※加工内容により料金が異なります。
まずは、画像をお送りください。
無料で見積り致します。
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クロムカスタム工房は
加工件数【4,285件】業界No.1、クオリティーもNo.1です。
◆一級貴金属装身具製作技能士
◆GIA GG(米国宝石学会宝石鑑定士)
両方をあわせ持つ店長の石津が、ご要望にお応えします。
どんなことでも、お気軽にご相談ください。
お問い合わせをお待ちしております。
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2. ホームページ更新情報
アップルウォッチ&クロムハーツ ブレスレット ダイヤカスタム
クロムハーツ ローラー ベルト部分のレザー交換
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■編集後記
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからも「クロムハーツの修理&カスタム情報」では、
皆さんに役立つ情報を提供できればと思っています。
ご感想・ご意見など、お気軽にご連絡ください。
では、また次回お会いしましょう!!(石津 雅之)
クロムカスタム工房株式会社
代表取締役 石津雅之 (info@kuromu.com)
◆一級貴金属装身具製作技能士◆
◆GIA GG(米国宝石学会宝石鑑定士)◆
546-0041 大阪府大阪市東住吉区桑津5丁目14-1
(TEL) 0120-958-966
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