バックナンバー第232号
潰れた爪が復活!クロムハーツのアフターダイヤを美しく修復する奥義とは
クロムハーツを愛する皆様、
あなたの“爪”は今、美しいですか?
爪と言っても、
「あ~伸びてきたな。そろそろ切らなアカン」
の“爪”ではありません。
ご愛用のお品にダイヤを入れて固定する際、
作らせていただいた“爪”です。
クロムハーツの石留めは少し独特です。
基本は、宝石の周りに数ヶ所、
爪を彫り起こして留めるスタイル。
アイテムによって、爪の位置や数も決まっています。
プリンッとした丸みのある爪は
クロムハーツの魅力の1つだと、私石津は思います。
しかし、その爪が長い年月を経て
平らに潰れてくる場合が結構あるんです。
「あれ?ちょっと、形変わった?」
ある時ふと、そんな風に
お気付きになるかもしれません。
今回は、そのような経年劣化した爪をなんとか蘇らせるという
“爪修復”の裏側をお届けします。
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◇◆意外に?めっちゃ大変◆◇
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「金属の玉が、そんな簡単に変形する?
何か特別な衝撃を受けた場合だけっしょ」
冒頭の説明を読んで、こう思われた方もおられるでしょう。
クロムハーツのシルバーは
銅を混ぜて強度をUPしてある“シルバー925”です。
(※92.5%が銀)
しかし、それでもシルバーは柔らかいもの。
毎日身に付けていると、なにかしら物と触れ合います。
わずかに削れたり、凹んだりetc.
その積み重ねで、だんだん変形してくるんです。
元の姿に近付けるためには、適切なメンテが必要になってきます。
ただ“修復”と一口に言っても
実はコレ、新品をフツーにカスタムするより
はるかに難しいんです。
↓まずは実際の修復例をご覧ください。
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【キーパーリング パヴェダイヤの爪修復】
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◇◆爪の修復は、なぜ難しい?◆◇
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いかがでしょうか?
例のキーパーリングの爪は、かなりの潰れようでした。
そのため、100%元通り…とまではいきませんが
かなり復元されたのが、お分かりいただけたと思います。
で、なんでコレが、激ムズなのか?
例えば、新品をカスタムする際は
まっさらの更地のような地金を彫ることになります。
何も手付かずの、未加工のリングやチャームなら
シルバーの厚みも十分にあるので、彫りやすい。
一方、既にカスタムされ、
しかも崩れかけている状態なら、そうはいきません。
加工された分、地金が減り、厚みも無くなっているからです。
爪の再形成に使えるシルバーが、少ないんです。
それに、あいまいになった爪と爪の間や、
乱れた爪のフォルムを立て直すには
また別の作業工程が必要となります。
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◇◆できたての輝く爪◆◇
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先程の修復例と比較するために
ここで通常のカスタム例も、ご紹介しておきます。
いずれもキーパーリングです。
↓爪のアップ画像をじっくりご覧になってみてください。
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【キーパーリング ダイヤパヴェ】
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【キーパーリング ルビーパヴェ】
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そもそも、キーパーリングのクロスの部分は
新品カスタムも決して簡単というワケではありません。
正規品と同じ、シャープにフチ取りした仕上げは
独自のノウハウが要ります。
そして、フチの内側の面積は、限られています。
その限られた十字内の、
1度彫られて窪んだ場所をまた彫るのは
難度が上がって当然といえば当然なのです。
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◇◆修復の4工程◆◇
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実際の修復の手順をざっくりまとめると
次のような感じです。
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【クロムハーツの爪修復の手順】
(1)くっついている爪と爪を分離する
(2)爪の周りのミゾを深く彫り直す
(3)先の細いヘラで爪に丸みをつける
(4)ナナコタガネで更に丸く整える
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修復例のビフォー画像の通り、
変形した爪は、隣の爪と合体した様になったりしています。
「アメーバかよ!」
と、ツッコミ入りそうですが;
まずは、それらの爪を元通りに独立させます。
この(1)の工程では、先が四角い
“片切りタガネ”という道具を使います。
(※タガネ…棒状の鋼を加工したもの)
片切りタガネで爪と爪の間を押さえるんです。
爪が分離できたら、次はその周囲のミゾを
慎重に彫っていきます。
その(2)の工程は“毛彫りタガネ”という
先が三角に尖ったタガネを使います。
これは文字通り“毛の様に細い線を彫る”タガネで
パヴェの枠を作るときなどに欠かせません。
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◇◆美を求めて仕上げ◆◇
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後半の(3)(4)では、爪を美しく整えることに徹します。
(3)では、先の細いヘラで、爪に1つずつ丸みをつけていきます。
ダレた地金を寄せながら、丸く形成していく感じで。
そして、いよいよラストの(4)。
おなじみの“ナナコタガネ”で丸のフォルムを仕上げます。
この一通りの流れで、やっと爪の再現が完了です。
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◇◆ナナコの注意点◆◇
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ナナコタガネはHPでもよくご紹介しているので
記憶していただいている方も多いと思います。
先っぽに半球状の凹みがあるタガネですが
これが無いと、爪は完成しません。
ナナコタガネを爪に当てるときは
宝石に負担をかけすぎないよう常に注意が必要です。
石に触れそうになるか?ならないか?位の
ギリギリのところを触ることもあるので、精密さが求められます。
力の入れ過ぎで、勢い余って
ダイヤにぶつけてしまってはいけません。
また、しっかり丸みをつけたいがために
グリグリし過ぎて、タガネの跡が残るのもNG。
どちらも“駆け出し職人あるある”です。
そのあたりの感覚は、言葉ではお伝えしきれませんが;
これで爪修復のポイントを
ほんの少しご理解いただけたかと思います。
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◇◆ゴールドも修復OK◆◇
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もちろん、22Kゴールドのアイテムも
シルバー同様に修復できます。
次の例は、モチーフと爪を全体的にお直ししたもの。
↓アフター画像で爪の輝きをご確認ください。
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【22Kフローラルクロスリング パヴェ修復】
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22Kゴールドはシルバー925より更に柔らかいので
小キズなども付きやすいです。
このようなメンテをしていただくことで
ゴージャスなゴールド・クロムハーツも生き返ります。
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◇◆例外もあります◆◇
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ところで、もし、あまりにも地金の厚みが足りなくて
すんなり修復できない場合は、打つ手はあるのでしょうか?
考えられる策は次の2つです。
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(A)いったんダイヤを外し、元より少し深い位置にダイヤを沈めて留め直す。
(B)いったんダイヤを外し、爪になる部分の地金を足す。
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(A)は、ダイヤの高さが変わってしまう
というデメリットがあります。
(B)は、ロウ付けで地金を盛るということですが
足した部分の爪は、少し強度が劣る可能性もあります。
というワケで、私石津も正直なところ
この2つは、あまり積極的にオススメはしません。
どうしても、というケースに限り
ベターな方でご対応させていただくことは可能です。
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◇◆爪のことなら石津まで◆◇
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爪の事を語りだすと、つい話が長くなります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
おそらく、身に付けられる頻度などにより
皆様のクロムハーツのコンディションも様々だと思います。
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◇宝石がしっかり固定されているか?
◇爪自体の形も美しいか?
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長年ご愛用のお品は、1度これらをチェックしてみてください。
クロムカスタム工房では、
ケース・バイ・ケースで最善の修復をさせていただきます。
なにか、分からないことや疑問があれば
いつでも石津まで気軽にご相談ください。
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【修理&カスタム料金】
※加工内容により料金が異なります。
まずは画像をお送りください。
無料でお見積り致します。
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クロムカスタム工房は
加工件数【4,268件】業界No.1、クオリティーもNo.1です。
◆一級貴金属装身具製作技能士
◆GIA GG(米国宝石学会宝石鑑定士)
両方をあわせ持つ店長の石津が、ご要望にお応えします。
どんなことでも、お気軽にご相談ください。
お問い合わせをお待ちしております。
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2. ホームページ更新情報
クロムハーツ フローラルクロスIDブレスレットでアップルウォッチにカスタム
クロムハーツ フレームドハートチャームに持ち込み石をカスタム
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■編集後記
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからも「クロムハーツの修理&カスタム情報」では、
皆さんに役立つ情報を提供できればと思っています。
ご感想・ご意見など、お気軽にご連絡ください。
では、また次回お会いしましょう!!(石津 雅之)
クロムカスタム工房株式会社
代表取締役 石津雅之 (info@kuromu.com)
◆一級貴金属装身具製作技能士◆
◆GIA GG(米国宝石学会宝石鑑定士)◆
546-0041 大阪府大阪市東住吉区桑津5丁目14-1
(TEL) 0120-958-966
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